Debridement 空とわたしと本棚と Août 2018 ④
夏空というのは、案外はかないものなのかもしれない。
それはいつまでも果てなく続くようでいて、あっという間に
終わりを迎える夏休みにも似ている。
蝉の鳴き声が少しでも悲しげに聴こえてきたら、
秋はもうほんのすぐそばまでやってきているのだ。
ほこりのかぶったおもちゃ箱を久しぶりにあけてみて、
ひとつひとつを大切に取り出しながら、
時を忘れて遊びふけった幼いころに思いを巡らせる。
この本のなかには、可愛らしい情景のなかに、
どことなく切ない痛ましさが漂う。
それは、こどもと心を通わせながら、
一生懸命、子どもたちに寄り添い存在していた、
おもちゃやぬいぐるみたちが、いまや暗がりの中に追いやられ、
忘れられ、押し込められている哀しさと
少し通じるところがあるからなのかもしれない。
とはいえ、だれもしらないおもちゃ箱のなかで繰り広げられる世界を、
自分もそっと覗きこんでいるような感覚に包み込まれる本だ。
ふしぎをのせたアリエル号
リチャード・ケネディ 作
中川 千尋 訳・絵
(1990 福武書店)
Tea Point
やきたてのパン、ゆでやさい、シチュー、コーヒー